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第8話 私は悪役令嬢なんですの?(14歳)

Author: 霧原いと
last update Last Updated: 2025-11-28 17:03:48

 王宮の応接間に呼び出しを受けて参上すると、そこにはスパリオと聖女さんの姿がありましたわ。

 二人は仲睦まじく腕を組んでいましたの。

 やってきた私に、スパリオは微笑みながら言いましたわ。

「エリー、僕は真実の愛を見つけたんだ。この聖女さんと結婚するよ」

「えっ……スパリオ、急に何を言い出しますの?」

「僕たちは、所詮は親同士の決めた婚約だからね。はっきり言わないと分からないかい?」

 狼狽える私を見つめるスパリオの眼差しが、氷のように冷たく変わりましたわ。

「エリザベス・スパイシュカ。今日をもって、僕は君との婚約を破棄する!」

◇ ◇ ◇

「いやあああああっ!!」

 叫びながら飛び起きると、そこは自室のベッドの上でしたの。

 どうやら夢を見ていたようですわ。とても恐ろしい夢。

 目が覚めたはずなのに、夢の中のスパリオの冷たい瞳が忘れられませんの。

 きっと、最近図書室で借りて読んだ小説の影響ですわね。

 平民出身の娘が王子様と恋に落ちて、婚約者である意地悪な”悪役令嬢”の妨害にもめげずに真実の愛を勝ち取るお話。街でも流行しているんですって。

 私とスパリオと聖女さんの関係をこの小説に見立てて、私を”悪役令嬢”みたいだと陰で噂する声があるのも知っていますわ。

 勿論、見当違いなので気にしていませんけれど。

 だって私は悪役令嬢ではなく、ハニートラップ令嬢なのですわ!

「ああ、いけない。今日はスパリオと会う日でしたわね」

 婚約者同士である私とスパリオは、学園で顔を合わせる機会が少ない代わりに、週末には必ず

一緒に過ごす時間を作っていましたの。

 ――いつもは楽しみな時間なのに、夢のせいで今日は憂鬱に感じてしまいますわ。

「駄目よ、エリー。私はスパリオをメロメロにするんだから。聖女さん相手でも、負けてられないわ!」

 弱気になりかける自分の気持ちを奮い立たせて、私は支度をはじめましたの。

◇ ◇ ◇

「お待たせ、エリー。遅れてしまってごめんね」

 スパリオは待ち合わせに10分程遅れてやってきましたわ。場所は王宮の中庭。テーブルにはいつかのように、お茶会の準備が綺麗に整えられていましたの。

「おーっほっほっほ! 構いませんわよ。スパリオは毎日、お忙しく過ごしているようですもの」

 ここ最近、端正な彼の顔に疲労の色が滲んでいるのは気になっていましたわ。何でも
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